どうしてリンパは存在するの?リンパの働きまとめや役割とは?
私たちの全身には、血管とともにリンパ管が
網の目のように張り巡らされています。
そして、いくつかのとても重要な役割を果たしています。
リンパ液やリンパ管、リンパ節など、
リンパのシステム全体のことを「リンパ系」と呼びます。
次に「リンパ系」とは?
まず、人間を始めとする哺乳類その他、脊椎動物の体内で
「リンパ系」が生まれたのかについてお話しますね。
その起源は、恐竜たちが地上を支配していた
一億年前よりも、もっともっと大昔にさかのぼります。
海の中でサメなど軟骨魚類の脊椎動物が生まれた
約四億年前のデボン紀のことです。
この時期、運動能力の高い脊椎動物たちは、
外敵である細菌類と闘わなければいけなくなりました。
体の中に入ってきた最近と闘うには、
「免疫機能」を持つ必要があります。
私たちにも必要な「免疫機能」とは?
免疫とは、体内に侵入した病原菌や毒素に抵抗し、
それに打ち勝つ能力のことです。
脊椎動物は、病原菌に打ち勝って生き残るために、
免疫機能を受け持つ「リンパ系」という仕組みを
つくりあげていったと考えられています。
また、デボン紀には、一部の生物が水中から
陸に上がり、両生類へと進化していきました。
陸に上がると、全身の皮膚が空気に触れ、
太陽にされされて、
体内の水分が外に出ていってしまいます。
さらに心臓から送り出された血液も、
毛細血管を通るとき、
水分が少し血管の外に漏れ出てしまいます。
生物の体内には一定の水分量が必要です。
このため、水分を摂って補うわけですが、血管から組織へ
漏れた水分(組織液)も回収したほうが、
体内の水を維持しやすくなります。
そのため病原菌と闘う目的に加えて、体の水分量を保つ
という意味でも、脊椎動物のリンパ系は
進化していったと考えられています
リンパ管の先端部である毛細リンパ管(起始リンパ管)は、
各種の臓器や皮膚の表面の近くで、
毛細血管から漏れた水分を吸収します。
そして、全身から集められた水分は、
最終的に静脈に注がれて心臓に戻ります。
病原菌と闘うことも、体内の水分量を保つことも、
生物が自分の体を守る
(恒常性の維持)ために必要不可欠な機能です。
つまり、脊椎動物は、「生体防御」という目的のために、
自分の体の中でリンパ系を築き、
発達させてきたのです。
私たち人間のリンパの場合でお話ししますね
心臓から送り出された血液は全身に行き渡り、
静脈を通って再び心臓に戻ってきます
その際、静脈から心臓に戻ってくる血液の量は、
動脈から出ていった血液の90%程度
だといわれています。
おおまかにいえば、10%くらいは毛細血管付近で
組織へ漏れてしまっているのです。
リンパ系は、静脈では戻り切らない水分を回収して
静脈に戻しながら、
同時に病原菌とも闘ってくれているわけです。
リンパ系がなければ、こうした生体防御機能も備わらず、
脊椎動物の多くはどこかの時点で外敵に負けて
滅びてしまったかもしれません。
その意味で、リンパ系はとてもありがたい存在
であるといえます。
リンパは体内でどのような働きをするの?
リンパ系の主な働きを整理しておきますね。
リンパ系には、大きく次の3つの機能があります。
組織液の吸収・運搬について
これまでも述べてきたように、動脈側の毛細血管から
静脈側の毛細血管に血液が移動する際、
約10%の血漿(けっしょう)が組織の隙間に
漏れ出してしまいます。
仮に、これが回収されずに溜まり続けると、
いったいどうなるでしょうか?
例えば、風船に水を入れ続けると
風船はふくらんでいきます。
人体においても、組織液が組織の隙間に溜まり続けたら、
その場所がどんどんふくらんでいくのです。
組織液が体のある部分で滞ってしまい、
パンパンにふくれあがった状態
を「ムクミ(浮腫)」といいます。
- 腕に組織液が溜まると腕が太くなります
- 脚に組織液が溜まると脚が太くなります
- 顔脚に組織液が溜まると顔が太くなります
それでは困るので、リンパ管の始まりの部分である
毛細リンパ管(起始リンパ管)が吸収し、
これを運び出しているわけです。
別の言い方をすれば、静脈をサポートするような形で、
漏れて溜まった組織液を
「排水・排導」していることになります。
排水といっても、液は捨てられるのではなく、
最終的には静脈へと戻されます。
ただ単に組織液を運搬するだけではなく、
古い細胞の残骸や代謝産物など、
いわゆる「老廃物」を回収して運ぶのも
リンパ系の大事な働きです。
血液でも老廃物は運ばれますが、リンパ液の中にも
老廃物が含まれていて、
リンパ管を通って運搬されていきます。
リンパ液の中の老廃物や異物は、リンパ管の途中に
たくさん設けられた「リンパ節」で
一部ろ過され、とり除かれます。
そのため、リンパ液が静脈に注ぎ込まれる頃には、
いくぶんきれいな状態になっています。
小腸の内壁の絨毛にあるリンパ管(乳び管)は、
食べ物や飲み物から脂肪を吸収します。
吸収された脂肪はリンパ管を通り、
いったん静脈に流れ込みます。
その後、脂肪分は血管を通って肝臓に運ばれ、
そこで処理されているのです。
体内に侵入してきた最近やウイルスなどの病原菌と闘うのも、
リンパ系の非常に重要な働きと言えるでしょう。
リンパ管に入った病原菌は、
リンパ液の流れに従って運ばれる途中、
リンパ節という「関所」を通ります。
この関所に大量にあるリンパ球や
マクロファージ(大食細胞)といった白血球が、
病原菌をやっつけてくれるのです。